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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)795号 判決 1957年2月12日

主文

原判決及び第一審判決を破棄する。

本件を京都地方裁判所に差戻す。

理由

大阪高等検察庁検事長代理次席検事松本武裕の上告趣意は、末尾添附別紙記載のとおりである。

所論は、本邦に不法入国した外国人には登録申請義務がない旨判断して同旨の第一審判決を支持した原判決は、札幌高等裁判所の判例と相反する判断をしたものであるというのであって、右札幌高等裁判所の判決は不法入国の罪と外国人登録証明書不所持の罪が併合罪であると判断する前提として不法入国者にも登録申請義務がある旨判示しているから、原判決は右判例と相反する判断をしたものというべきである。そして札幌高等裁判所の判決中不法入国者にも登録申請義務を認めた点は、原判決後の当裁判所大法廷判決昭和二九年(あ)第二七七七号同三一年一二月二六日言渡)によって正当とされているのであるから、右札幌高等裁判所の判断とその法律上の見解を異にし、この登録申請義務を否定して無罪を言い渡した一審判決及びこれを維持した原判決は、ともに刑訴四一〇条一項本文により破棄を免れない。論旨は理由がある。よって同四一三条本文により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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